
就労継続支援B型×AI #01|利用者の表現力を引き出すAI活用法とは?
就労継続支援B型の現場で、「利用者さんの工賃をもっと上げてあげたい」「新しい仕事に挑戦させてあげたいけれど、何から始めればいいか分からない」と悩んでいませんか?
「AIなんて、うちの利用者さんには操作が難しそう」そう思われがちですが、実は今、福祉の現場にこそAIが必要とされています。AIを味方につければ、利用者さん自身の苦手をカバーし、これまで諦めていた新しい分野で才能を発揮する道が開けるんです。
この記事では、私たちが運営する就労継続支援B型事業所での実体験をもとに、AIを活用することで生まれたメリットや、具体的な活用例、現場で感じた課題について分かりやすくご紹介していきます。
なぜ今、AI活用が注目されるか
今、多くの就労継続支援B型事業所が「利用者さん自身によるAI活用」に注目している最大の理由は、AIが「心とスキルのバリアフリー」を実現してくれるからです。これまでのB型事業所の仕事は、どうしても軽作業が中心になりがちでした。しかし、AIという強力な「サポート器具」を手に入れることで、その状況は劇的に変わろうとしています。
障害の特性をカバーし、表現力を引き出す
まず、AIは利用者さんのやりたいという気持ちを形にする天才と言えるでしょう。「頭の中には素敵な物語があるのに、文章にまとめるのが苦手」「アイデアはあるけれど、絵に描くことができない」といったジレンマを抱える方は少なくありません。
そこでChatGPTやGeminiの画像生成AIを活用すると、短いキーワードや会話から、見事な文章やイラストを数秒で作ってくれます。AIは、利用者さんにとって表現の壁を取り払ってくれる、とても優秀なツールと言えるでしょう。
「できない」を「できる」に変える
次に、利用者さんが高単価な仕事に挑戦するハードルをぐんと下げてくれます。単純作業だけでは、どうしても工賃を上げるのが難しい現実がありますよね。しかしAIを相棒として使えば、これまでは専門スキルが必要だったWebデザインや動画編集といったクリエイティブな仕事に、誰もが挑戦できるようになります。
自分にしかできない仕事を生み出すことは、利用者さんの工賃アップはもちろん、「社会の役に立っている」という大きな自信につながっていくはずです。
就労継続支援B型でのAI活用例
では、実際に利用者さんはどのような場面でAIを活用できるのでしょうか。ここからは、私たちが運営する就労継続支援B型の現場で、利用者さんが主役になれた具体的な活用例を紹介します。
動画制作で「好き」を仕事にする
AIを活用することで、利用者さんが動画クリエイターとして活躍する道が開けます。動画制作は、これまで「カット割り」や「テロップ入れ」など気の遠くなるような作業が必要でした。しかし最近では、AIが音声を読み取って自動で字幕をつけたり、魅力的なBGMを生成したりしてくれます。
自分の声で話すことが苦手な方でも、AI音声(ナレーション)を使えば立派なPR動画を作ることが可能です。趣味のゲーム実況や事業所の紹介動画など、「好き」を活かした新しい仕事の柱として非常に期待されています。
実際に私たちの事業所では、動画制作に興味はあるものの話すことに苦手意識があった利用者さんが、AIナレーションを活用して動画制作に挑戦しました。最初は簡単なテロップ動画からスタートしましたが、徐々に編集や構成にも関わるようになり、完成した動画が周囲に評価されたことで自信がつき、「もっと作りたい」と前向きな気持ちで取り組むようになったのが印象的でした。
WEBデザインでプロ顔負けの作品づくり
WEBデザインも、AIのサポートがあれば未経験から挑戦できる立派な仕事です。「どんな色を使えばいいか分からない」という時でも、AIに相談すればプロのような配色やデザイン案を提示してくれます。画像生成AIを使って、オリジナルのイラスト素材を作ることも簡単です。
その結果、地元商店のWebサイトやバナー制作といった高単価な仕事を受注し、利用者さんの工賃にしっかり還元することができます。
実際に私たちの事業所では、デザイン未経験だった利用者さんがAIを活用しながらバナー制作に挑戦し、最初は配色やレイアウトに悩んでいたものの、AIの提案を参考に改善を重ねることで、最終的にはクライアントに採用されるクオリティの作品を完成させることができました。その経験が大きな自信となり、継続的にデザイン案件に取り組めるようになったのです。
SNSの文章作成や広報活動の主役に
事業所の魅力を外部に伝える広報活動も、利用者さんがAIを使って担当することができます。Instagramやブログを更新したくても、写真に添える文章が思い浮かばない。そんな時、AIに写真の状況や伝えたい思いを入力すれば、読者の目を引く説明文やハッシュタグを自動で提案してくれます。
利用者さん自身が情報発信の主役になることで、社会とのつながりを実感し、働くモチベーションの向上にも貢献するでしょう。
実際に私たちの事業所では、これまで発信に自信がなかった利用者さんが、AIを活用してブログの投稿文作成に挑戦しました。写真の内容を簡単に伝えるだけで魅力的な文章が完成するため、少しずつ投稿にも慣れ、今では自分から「次はこんな投稿をしてみたい」と提案してくれるようになり、主体的に広報活動へ関わる姿が見られるようになりました。
導入前に知るべき3つの課題
ここまで利用者さんがAIを使う魅力をお伝えしてきましたが、もちろん注意すべき点もあります。利用者さんが安全に、そして楽しくAIを使えるように、スタッフがサポートすべき3つの課題を整理しておきましょう。
デジタルリテラシーと情報モラル
まず最も重要なのが、個人情報などの情報漏洩を防ぐためのルール作りです。AIは入力されたデータを学習に使うことがあります。利用者さんが悪気なく、自分や他人の実名、住所、悩みの詳細などを入力してしまうリスクはゼロではありません。
「AIには個人情報を絶対に入れない」といった分かりやすいルール(ガイドライン)を作り、スタッフが定期的に見守ることが導入の絶対条件となります。
「依存」や「挫折」を防ぐメンタルケア
次に、利用者さんの「心」への配慮も欠かせません。AIの返答をすべて鵜呑みにしてしまったり、思い通りの結果が出ずにイライラしてしまったりするケースも考えられます。また、AIに任せきりで自分で考えるのをやめてしまうという依存への注意も必要です。
AIはあくまで道具であることを丁寧に伝え、うまくいかない時はスタッフが一緒に考え、伴走する姿勢を忘れないでください。
誰でも使いやすい環境やツールの整備
最後に、パソコンやタブレットといった環境の問題です。せっかく便利なAIがあっても、文字入力が苦手な方や、視覚に障害がある方にとっては使いづらい場合があります。音声入力を使ったり、画面を見やすく設定したりといった配慮が必要です。
それぞれの障害特性に合わせたデバイスやツールを選び、誰ひとり取り残さない環境づくりが、成功へのカギを握っています。
まとめ
就労継続支援B型の現場にAIを取り入れることは、単なる作業の効率化ではありません。利用者さんの「やってみたい」という気持ちを後押しし、これまで諦めていた能力を引き出すための新しい魔法の杖なんです。
私たちの事業所ではAIの導入をきっかけに、これまで一歩踏み出せなかった利用者さんが自ら挑戦するようになり、できることが増えると同時に、表情や言葉にも前向きな変化が見られるようになりました。AIは単なるツールではなく、人の可能性を広げるきっかけになる存在だと強く実感しています。





